【2020年4月14日】今日は七十二候「虹始見」!〜美しい虹小話〜
《この記事の文字数:約3,800》
ちょっと読み応えアリ
どうも、chimonです。
今日は七十二候の一つ「虹始見(にじはじめてあらわる)」なんだそう。
名前が美しすぎないか?!と興味を惹かれたので、今回は虹と日本にまつわる小話をお伝えしていこうと思います!
それではさっそく参りましょう。
1. 虹が特別なのは昔から同じ
冒頭でご紹介した通り、今日は七十二候の第十五候「虹始見」。
二十四節気「清明(せいめい)」を三つに分けたうちの末候にあたります。ちなみに、清明に含まれる三つの候は次の通り。
《清明に含まれる七十二候》
- 玄鳥至(つばめきたる):ツバメが南から日本へやってくる
- 鴻雁北(こうがんきたへかえる):雁が北へと渡っていく
- 虹始見(にじはじめてあらわる):雨の後に虹が出るようになる
あ、清明についてはこちらからどうぞ!
himekuri-nippon.hatenablog.com
虹とは、大気中の水滴の中を太陽光が通過した際、太陽光がそれぞれの色に分解することで起こる現象。
つまり、太陽光がふんだんにある方が発生しやすいということです。
実際には冬でも虹が見られることはあるのですが、昔から虹が出る=太陽さんさん=暖かい季節の訪れという感覚だったみたい。
これは、俳句の季語によく表れています。
「虹」だけだと夏の季語になるのですが、「初虹」と言うと春(晩春)の季語。
夏に比べるとまだ太陽光が弱く、初虹も淡く儚い虹のことを指します。その儚さを人生や運命なんかと重ね合わせ、多くの名歌が生まれてきたわけですね!
「きごさい歳時記」季語−初虹
それにしても、「桜」「薄氷(うすらい)」「霞・朧(おぼろ)」そして「初虹」と、春の季語はやたらと脆く儚い印象の物が多い…。
春って、暖かく生命力にあふれた季節であると同時に、そこから生命の脆さとか儚さ、一瞬の美しさみたいなものを想起させる季節と捉えられてきたのでしょう。
奇しくも、日本に「年度」という考え方が取り入れられたことで、現実的な意味としても「出会い」「別れ」を象徴する季節になったという…。
himekuri-nippon.hatenablog.com
一つ言えるのは、昔から虹っていうのは特別な存在だったってことでしょうね。
聖書の世界では「ノアの方舟」伝説において、神との契約の証として虹が登場するのは有名な話。
虹はまさに和解や平和の象徴ですから、特別視されてきたことは間違いありません。
ただ、日本における虹の意味合いっていうのは、結構変化してきたみたいです。
2. 虹は不吉の予兆?!
古代の日本においては、虹は不吉の予兆だったって説もあるそう。
え?!キリスト教世界観とは正反対!!
そもそも「にじ」という言葉の語源は、池や森に棲むとされる「主(ヌシ:わかりやすく言うと「もののけ姫」の世界観)」と同じと言われています。
「もののけ姫」を思い返せば、人々は主に対して畏敬の念を抱いていますよね。
人々にとっては、虹もどこか恐ろしい存在だった模様。
日本では虹に関わらず、多くの自然現象を「神の起こした業」と捉える傾向があります。
全ての物事に神様が宿ると考えるから「八百万の神」ということになるわけで、美しくも怪しげな謎の現象「虹」を不吉の前触れと考えたのは、無理もないことなのかも。
時代は下り、平安時代には「虹が出たところに市場を立てる」という慣習が生まれます。
これは、中国の伝承に起因するものらしい。
古くから中国では、蛇が空に昇って龍になるとされ、虹も蛇の一種として捉えられていました。
「虹」という漢字が虫偏なのも、この考え方が由来!
こうした「虹蛇伝説」というのは、アフリカやオーストラリアのアボリジニなんかにも伝わる話。自然を畏敬する民族に共通する考え方ってことかもしれません。
おそらく中国の文化が伝わってきてから、日本でも虹=龍と捉えるようになったと考えられます。
中国文化の影響で、日本において龍は水を司る神と捉えられてきました。代表的なのが古事記において、イザナミがヒノカグツチを斬り殺した際に誕生した、闇淤加美神(クラオカミノカミ)・闇御津羽神(クラミツハノカミ)。
※古事記におけるこの場面は、こちらの記事で取り上げていますが…上記二柱の神は省略してます。ごめんなさい。笑
himekuri-nippon.hatenablog.com
この神は、京都の貴船神社のご祭神としても知られていて、止水や降雨を司る神として崇められてきました。
転じて、水によって豊穣をもたらす神とも考えられたのです。
結果、空にかかる虹は豊穣をもたらす龍神と同一視され、その下に市場を立てれば繁盛すると考えられたわけ。
とは言え、龍ですから、場所によってはやっぱり虹=怖い存在と捉えるところもあったみたいです。
中世の貴族は、虹が出ると「これは吉凶どっちの虹かなー?!」って占わせたそうな…!
不吉なもの一辺倒からは抜け出したけど、やっぱり不気味なものであることに変わりはなかったんですね。
3. 虹が七色であるという意義
古くから「不吉の前兆」と考えられてきた虹ですが、現代ではむしろ「めでたいもの」の象徴みたいになってますよね。
まあ欧米文化の影響と言えばそれまでですけど、これにはもっと深い理由があるようです。
ちょっと話は変わりますが、「虹は七色」って世界共通じゃないということはご存知でしょうか?
例えば、よく知られているところで、アメリカは「赤・橙・黄・緑・青・紫」の6色。
下のウェザーニュースのコラムによると、一番少ないところでは「赤・黒」の2色と捉えているそう!黒!!
え?!と思いますが、要するに色の見え方なんて人それぞれなわけで、小さい頃から「7色」だと教わってきたから、そう見えるだけの話ですよね。
色の境界がはっきりしているわけではないので、間の色を取ろうと思えば、全然違う色で捉えることも可能なわけです。
ちなみに、古代の琉球でも「赤と黒」「赤と青」といった2色で捉える考え方が一般的だったんですって!
で、問題は日本。
実は日本も、かつては虹=7色ではありませんでした。
多かったのは「5色」。古くは6色や8色で捉えていた時代もあったようです。
まあ別に虹が何色かなんて、統一した考え方が必要なかったって可能性はありますよね。
これ、とても重要な話。
要するに、虹に対する「統一的な理解」をさせる仕組みが整ったからこそ、日本では「虹=7色」に定着したと言えるわけです。
そんな「統一的な理解」をさせる仕組みが整った時代と言えば…?
そう!明治時代です。
明治の学校教育において、日本では「虹=7色」という考えが取り入れられたのでした。
この「虹=7色」という考え方を生み出したのは、なんとあのニュートンらしいんですよね!
・科学に触れる学びのトレインキャタライナー「化学Q&A」
https://www.cataler.co.jp/train/qa/environment/04.php
一説では、ニュートンが活躍していた時代、ヨーロッパでは音楽が重要な学問として捉えられており、自然現象と音楽を結びつけることに大きな意味があったらしいのです。
そこで、虹を7色としてド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シという7つの音階と対応させることで、無理やり(?)音楽理論と結びつけたということのよう。
ふーん。
まあ、先ほどの通り、ヨーロッパでは他の色数で虹を捉えるのが普通でしたから、かなり変人扱いされたみたいですけど…笑
流れは正直よくわかりませんが、この説が日本に流入し、明治以降の学校教育に取り入れられたという経緯があります。
日本において虹が縁起の良いものとされるようになったのは、まさにこの「虹=7色」という認識が広まったことが関係しています。
どういうことかと言いますと、7色というのが仏教における「七難即滅 七福即生」という考え方と結びついたと考えられるのです。
「七難即滅 七福即生」とは、意訳すれば「災い転じて福となす」的な意味。七つの大難を滅ぼすことで、七つの福が訪れるってことですな。
この考え方、今も広く信仰される「七福神」信仰の由来になったもの。
こうした要素が合わさって、7色の虹は七福神に照らし合わされるようになり、いつの間にやら虹はめでたいものとなったんですね…。
とは言え、江戸時代の絵画などにも虹は見られますから、不吉なものというよりは「神秘的なもの」へと価値観は変化していたようですが!
4. おわりに
虹の小話をお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?
「統一的な見解」が整ったから、「虹=7色」となったというお話をしましたが、国によっては「統一的な見解」がそもそも無いってところもあるようです。
考えてみれば、虹が何色かなんて人それぞれで良い気もします。
何気ないことですが、国民共通の意識を醸成するっていう考えが強く表れているのかもしれません。
突然話変わります。笑
ニュートンじゃないけど、日本でも虹は音楽によく登場するキーワード。
いろんな歌がありますが、chimonはやっぱりこれが好き。
Mr.Children 「ヒカリノアトリエ」 MUSIC VIDEO
ということで、今日はこの辺で!!
(参考資料)
・中村啓信訳注『新版 古事記 現代語訳付き』角川文庫, 2009
・山折哲雄監修、田中治郎著『新版 面白いほどよくわかる日本の神様』日本文芸社, 2013
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chimon
※本ブログの記事は、参考文献等の記載事項を基にして筆者独自の考えを交えて展開するものです。歴史的事象には諸説あるものが多いため、あくまでも一つの説として捉えていただきますようお願いいたします。