【2020年2月24日】超意訳!中学生でも読める古事記vol.5〜アマテラスとスサノオの誓約編〜
《この記事の文字数:約4,500字》
ちょっと読み応えアリ
どうも、chimonです。
昨日は、過去を振り返る1日のため、シレッとお休みいただいておりましたが…
そんな休み明けの今日は、久々の「超意訳!中学生でも読める古事記」シリーズ!
第5弾となる今回は、「アマテラスとスサノオが繰り広げる謎の誓約(うけい)」編をお送りします。
父・イザナキに追放されたスサノオは、別れの挨拶をしに天上界のアマテラスの元を訪れるが、アマテラス姉さんは完全武装…!
二人はどうなってしまうのか?!
前回の第4弾「禊と三貴子誕生」編を読んでいない方はこちらから。
himekuri-nippon.hatenablog.com
最初から読みたい!という方はこちらから。
himekuri-nippon.hatenablog.com
※斜字:補足、もしくは原文にないchimonオリジナル解釈&ツッコミ笑
10. 本編① 危ない弟(?)スサノオ襲来
イザナキさんに高天原(たかまのはら)を追放されてしまったスサノオくん。
「こうなっちゃったからにはなあ、アマテラス姉さんにちゃんとお別れを言ってから、ママ(イザナミ)のいる根の堅洲国(ねのかたすくに)に向かうことにしようかなあ」
そう言って、アマテラスさんに会うべく高天原に上って行きました。
<一方その頃、高天原では…(多分に意訳。笑)>
諸神A「な、なんだ…?!」
諸神B「じ、地面が揺れている…!」
諸神C「山も川も動いている…!」
諸神全員「なんじゃこりゃーーー!!」
スサノオさんが高天原に上るだけで、地面が揺れて山川がすべて動くという描写。「スサノオさんは凶暴な神だよ」ってことを表したい模様。
この様子を聞いたアマテラスさんは大慌て!
「えええええ!絶対、スサノオのことだもん、悪いこと考えてんじゃん…!だって、スサノオだよ?ヤバいもん、アイツ!!高天原に上ってくるってことは、高天原を奪いに来たに違いないわ…!!!」
こう言うと、スサノオさん襲来に備えて、長い髪を解いて左右に分けて束ねました。(要するに男装をしたってこと)
そして、左右のみづら(髪を束ねた部分)・髪飾り・両手に、たくさんの大きな勾玉で作られた数珠状の飾りを装着!
さらに、背中には1,000本の矢が入る武具、腹には500本入る矢入れをつけ、左手首に威勢の良い音が出る竹製の鞆(とも:弓を射る時に左手首につける道具。弓の弦に打たれると音がする。)をつけました。
万全の武装をしたアマテラスさんは、弓を思いっきり振り立て、地面に両足が腿(もも)まで入るくらい強く踏みつけ、踏んだ地面を泡雪のように蹴散らかしながら進みます。
地面が泡雪のように…って、アマテラスさんの足はどないなってまんの?笑
そんな威勢の良い振る舞いでスサノオくんを待ち構え、彼に尋ねます。
「スサノオ!!!お前、何しに来たぁぁぁぁぁ!我、なめとんのかゴルァ!」
アマテラス姉さんのめっちゃ怒ってる姿を見て、スサノオくんはこう答えました。
「アマテラス姉さん!俺、悪いこと全然考えてないよ?パパ(イザナキ)に『お前、なんでいつまで泣いてんの?』って聞かれたから、『ママ(イザナミ)のいるところに行きたいと思って泣いてたんだ!』って答えたら、『じゃあお前はこの国から出てけー!』って言われちゃって、高天原を追放されることになっちゃったんだ。」
「だから、俺、高天原を出て行くねってアマテラス姉さんに言いたかっただけなんだよー!決して悪い心はないよぉぉぉぉ!」
これを聞いたアマテラス姉さんは、こんなことを言い始めます。
「あんたの言ってることは信用ならんわ!!どうやって、やましい気持ちはないって証明してくれるわけ??あん???」
ここだけ見ると、アマテラス姉さん、完全にヒステリックな姉貴。笑
姉の疑問に対し、スサノオはある提案をしました。
「俺と姉さんでそれぞれ『誓約(うけい)』をやって、子供を作って証明しよう!」
スサノオくん…ちょっと何言ってるか分かんないっす。笑
11. 本編② 神々の神過ぎる神事「誓約」
スサノオくんの提案によって、天の安河(あめのやすかわ:高天原を流れる川)の両岸に二柱が立って、誓約が始まりました。
まず、アマテラスさんがスサノオくんに、スサノオくんのつけている十拳の剣(とつかのつるぎ)を渡すよう求めます。
アマテラスさんは、スサノオくんの十拳の剣を受け取ると3つに折って、玉同士がぶつかる音が立つくらいに天の真名井(あめのまない:高天原にある神聖な井戸)の水ですすぎました。
その剣を噛みに噛んで、フーッと吹いた霧の中に現れた神の名は、多紀理毘売命(タキリビメノミコト)。この神は別名・奥津嶋比売命(オキツシマヒメノミコト)。
次に市寸嶋比売命(イチキシマヒメノミコト)、別名は狭依比売命(サヨリビメノミコト)。
最後に多岐都比売命(タキツビメノミコト)が生まれ、計三柱の神が誕生したのです。
剣折っちゃうの神だし、噛み砕いちゃうの神だし、フーってやって神生まれちゃうの神だし。神が神がかり過ぎて、もはや理解できない範疇。笑
次はスサノオくんの番!
スサノオくんは、アマテラス姉さんの左の髪についている勾玉のアクセサリーを渡すよう求めます。
その勾玉の飾りを、玉同士がぶつかる音が立つくらいに天の真名井ですすぎました。
その勾玉の飾りを噛みに噛んで、フーッと吹いた霧の中に現れた神の名は、正勝吾勝々速日天之忍穂耳命(マサカツアカツカチハヤヒアメノオシホミミノミコト )。
長過ぎて絶対覚えられない名前なので、オシホミミくんで覚えましょう。笑
古事記のハイライトとも言える「天孫降臨神話」の主人公・邇邇芸命(ニニギノミコト)の父神なので、覚えておくと良いですよ!
この長い名前には「正に勝つ、私は勝つ」という意味合いが込められていて、スサノオくんの「フーッ」から生まれた子が男の子だったので、スサノオくんが「俺は誓約に勝った!無実だ!」と勝ち誇ったということを表しているのです。
日本書紀だと、最初から「男の子が生まれた方が勝ち」というルールが決められていることがあるのですが、古事記ではルールが特に書かれていません。つまり、スサノオが本当に勝っているのかどうかは分からないのです!
…さっぱり分からない?それで正解なのです!!笑 神話に答えを求めてはいけません。
次にスサノオくんは、アマテラス姉さんの右の髪についている勾玉から天之菩卑命(アメノホヒノミコト)、髪飾りの勾玉から天津日子根命(アマツヒコネノミコト)、左手に巻いていた勾玉から活津日子根命(イクツヒコネノミコト)、右手の勾玉から熊野久湏毗命(クマノクビノミコト)を生み出しました。
これで、スサノオくんの吐き出した息から誕生したのは計五柱。
それぞれが神を生み終わると、アマテラス姉さんがこんなことを言います。
「ふーん、男の子五柱ね。というか、それは私の身につけていた勾玉から生まれた子なんだから、この子たちは私の子でしょう?逆に、先に生まれた三柱の女の子は、スサノオの剣から生まれた子なんだから、こっちはあんたの子ね!」
そう言って、先に生まれた三柱の女神がスサノオの子、後に生まれた五柱の男神がアマテラスの子と分けたのでした。
はい、もう混乱。笑
はっきり言って、古事記全編を通して最も意味不明な部分といっても過言ではありません。少なくとも個人的にはそう。
意味不明さに関しては、「意味が分からないことにこそ意味がある」という説があるので、この後ご紹介しますね。笑
こうして先に生まれた三柱の女神は、それぞれ宗像大社(むなかたたいしゃ)の奥津宮(おきつぐう)・中津宮(なかつぐう)・辺津宮(へつぐう)に祀られています。
世界遺産にも登録されている福岡県の宗像大社のご祭神にまつわる話ですね。
そして、その後に生まれたアメノホヒくんの子供である建比良鳥命(タケヒラトリノミコト)は、出雲国造(いずものくにのみやつこ)などの祖神です。
この他にも「〇〇氏の祖神だよ」的な話が続くのですが、特に出雲氏系の祖神というのが重要。かつて出雲には大和政権にも匹敵する強力な氏族がいたと見られ、彼らが「天皇の祖神であるアマテラスの子孫だ」という話にするというのが、この部分の大切な役割なんですね!
出雲と大和については、国立博物館の企画展の記事でもお話ししましたね!
himekuri-nippon.hatenablog.com
12. 解説〜意味が分からないことに意味がある〜
たぶん、多くの人がこの部分を読んで「どういうこと?」ってなったんじゃないでしょうか?笑
まず、誓約っていう儀式がなんのこっちゃって感じだし、スサノオが何を持って「勝った」と言っているのかも分からないし、最後にアマテラスが子供を入れ替えてるのも意味不明…。
これらは、実は「わざと意味が分からないようにしている」という説があります。
西條勉著『『古事記』神話の謎を解く』で、独自の見解が述べられていたのでご紹介しましょう。
古事記では、ウケイの直後にアマテラスが子の所属を再決定する。オシホミミを含む五神については、材料が玉から出たのでアマテラスに所属させ、三人の女神は、材料がスサノオの剣だから、スサノオの子とする。
子供の所属を決め直すことで、スサノオが皇祖神になってしまう矛盾はなくなった。しかし、そのかわり、勝ち負けがあいまいになった。あらかじめ男神を生んだほうを勝ちとする日本書紀では、スサノオが悪神になる。これこれで明快だが、するとスサノオが敗者にならねばならず、スサノオは高天の原を奪いに昇天したことになる。この筋書きは、話の流れに合わない。スサノオが負けるのも、無理のあるストーリーだ。
結局、ウケイ神話のねらいは、いろいろなものをあいまいにすることだった。
西條勉著『『古事記』神話の謎を解く」P84より引用
つまり、スサノオというのは昔から知られていた神であって、それをアマテラス中心の大和政権の神話に組み込むため、あえて訳の分からない誓約という儀式を入れ込んだのではないかということ。
「意味が分からない」って感想を抱いたあなたは、すでに巧妙な古事記トリックにハマっているということなのかもしれませんね!!
《vol.6に続く》
次回予告!
誓約に勝利したと勝手に宣言したスサノオくん。
勝者だー!と言わんばかりに、高天原でやりたい放題。
最初のうちは優しく見守っていたアマテラス姉さんでしたが…
ある事件をきっかけに、弟に恐れおののき洞窟に隠れてしまいます。
太陽神を失った世の中は暗闇に包まれ…
次回「神様だって怖いんだもん!〜天岩戸隠れ編〜」!
お楽しみに!!
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chimon
(参考文献)
・中村啓信訳注『新版 古事記 現代語訳付き』角川文庫, 2009
・山折哲雄監修、田中治郎著『新版 面白いほどよくわかる日本の神様』日本文芸社, 2013
※本ブログの記事は、参考文献等の記載事項を基にして筆者独自の考えを交えて展開するものです。歴史的事象には諸説あるものが多いため、あくまでも一つの説として捉えていただきますようお願いいたします。