【2020年6月4日】日本は軟水って言うけれど…硬水と軟水の違いとは?〜水道週間特集②〜
《この記事の文字数:約3,900》
ちょっと読み応えアリ
どうも、chimonです。
6月1〜7日は「水道週間」ということで、水道や水にまつわるトピックスをご紹介しています。
水道週間特集の第2弾となる今回は「硬水と軟水の違い」について、さまざまな角度からご紹介していきたいと思います!
「日本は軟水が多い」
「海外製のミネラルウォーターは硬水が多い」
「軟水はまろやか、硬水はなんか苦い」
漠然としたイメージはあるかもしれませんが、違いをちゃんと理解していますか?
ちなみに「日本茶は軟水で淹れた方がいい」と言われています!
ということで、今回はそんなことにも触れながら「硬水と軟水の違い」について、まったりご紹介していきます。
■水道週間特集第1弾「日本における水道の歴史」はこちらから!
himekuri-nippon.hatenablog.com
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1. 硬水と軟水はこう違う!
(1)ミネラルって硬いのかい?
まずは、硬水と軟水って何じゃらほい?というお話から。
ご存じの方も多いとは思いますが、硬水・軟水というのは「硬度」という尺度によって決まっています。
「硬度」というのは、「水1リットルに含まれるカルシウム・マグネシウムの量」を指す数値。
言い換えると…
ってことになります。
硬度の計算方法としては、主にアメリカ式とドイツ式があるそうですが、日本では広くアメリカ式が採用されています。
参考までにアメリカ式の計算方法をご紹介しておきますね。自分で計算する必要ないけど…。
硬度(mg/l)
=カルシウムの量(mg/l)×2.5 + マグネシウムの量(mg/l)×4.1
覚えなくても大丈夫です、おそらくテストには出ません。笑
カルシウムとマグネシウムの量で硬度は決まるよ、ということだけ覚えておきましょう。
硬水を飲むと苦味を感じるのも、こういったミネラルが多めに含まれているのが原因です。
ミネラルも味があるそうで、こちらのページによるとマグネシウムが苦味の素みたい。
(2)硬水と軟水のあいだ
問題は、どれくらいの硬度を基準にして、硬水・軟水と呼び分けるかという話です。
実は、統一された基準があるわけではないのです。あらま。
WHO基準やメーカー基準などさまざまな指標が存在するんですが、ざっくり次のように定義されることが多いみたい。
「中硬水」っていうのは、真ん中あたりってことで使われる概念ですね。
基本は、硬度が100を下回れば「軟水」、100を上回れば「硬水」って考えればOK! (WHO基準だと120が境目になります、念のため)
(3)硬水を飲むとお腹が緩くなる…?!
ところで、硬水を飲むとお腹が緩くなる、っていう人いませんか??
何を隠そう、chimonもその一人でして。
数年前にヨーロッパ旅行へ行った際には、毎日多量の硬水ミネラルウォーターを飲んだおかげで、ビックリするくらいの快便が続きました。笑
それからしばらく、日本に帰ってもエビアンを飲み続けていたという…痩せるかな、って思って。(結局続かなかったんだけど。)
これの原因は、硬水に含まれる多量のマグネシウム!
マグネシウムって下剤にも含まれているらしく…硬水を飲み慣れていない日本人からすると、硬度の高い硬水を飲む=天然の下剤を服用しているのと同等ってことらしい。笑
ただ、先ほどの説明から推測すると、カルシウム分が多い硬水だったら腹は下しにくいってことなのかも。
2. 日本は軟水大国ってほんと?
(1)実は硬度にも地域差があるという事実
先ほどから当たり前のように
「日本人は硬水を飲み慣れていない」
「ヨーロッパで硬水を飲むと」
なんてお話をしてますが…
本当に日本は「軟水大国」なんでしょうか?
結論から言うと…
基本的に日本は軟水が多い!でも地域差があるよ!
って感じです。
地域差をわかりやすくまとめているページがありますので、ぜひともご覧ください。
この「全国水質マップ」を見ると、関東や九州は比較的硬度が高めであることがわかりますよね。
さらに、沖縄は「硬水(中硬水)」レベルということになります。
関東も埼玉・千葉の一部では、中硬水レベルの地域が見られますよね。
これだけ地域差が大きいため、一概に「日本は軟水」とは言い切れないわけです。
とは言え、北海道・東北から西日本に至るまで、ほとんどの地域が軟水なんですけどね。
(2)軟水と硬水の違いが生じるワケ
こうなると気になるのが、軟水と硬水の差はどうして生まれるのか?という点。
日本国内でも地域差があるくらいですから、何かしらの地質的要因があるはずですよね?
ということで調べてみると、次の2点が主な原因と言えそうです。
- 日本は急峻な地形で、水がすぐに流れ出してしまうから。
- 日本は火山列島であり、浸透性の高い火成岩(マグマが固まってできた岩石)でできた地層が多いから。
順番に説明しますね。
1つ目は、何となくわかるんじゃないでしょうか?
学生時代の地理の授業で「日本の川は流れが急、ヨーロッパの川は流れが緩やか」って習いましたよね。(覚えてない人は、ここでも読んで勉強してください。笑)
降った雨は、すぐに地表へ現れ、あっという間に海へ流れ出します。
だから、水に溶け出す地中の成分量が少ないというわけ。
逆にヨーロッパの地形は緩やかなので、降った雨は時間をかけて地中を流れていくことになります。そのため、地中に含まれるミネラルがたっぷり溶け出した硬水が生まれるのです。
ちょっとわかりづらいのが2つ目。
日本が火山列島であることは言わずもがなですが、多くの地層が「火成岩」と呼ばれるマグマの固まった岩石でできています。
火成岩の地層というのは密度が低い(わかりやすく言えば、穴がたくさん開いているイメージ)ため、水が浸透しやすいそう。
結果、水がすぐに地中へ浸透し、そのまま流れていってしまいます。
こうなると、やっぱり地中のミネラルが水に溶け出す時間が短くなるんですね。
要するに、地層の特徴的にみても、日本の水は硬水になりにくいというわけなのです。
(3)「関東と沖縄は例外」の謎
ここで、先ほどご紹介した「全国水質マップ」を思い出してほしいのです。
関東の一部と沖縄(あと九州の一部)は、中硬水でしたよね?
何でこれらの地域だけ、軟水じゃないんでしょうか?
まず、沖縄は何となく想像がつきます。
沖縄の島々の中には、サンゴからできた石灰岩質の島が多く見られます。
石灰岩の主成分は炭酸カルシウムなので、石灰岩質の場所では硬水になる傾向が見られるのです。
実際、ヨーロッパも石灰岩質の地域が多いので、硬水の割合が高いんですよね。
問題は関東です。
これは「関東ローム層」が影響していると考えられます。
関東ローム層は火山灰が堆積した地形であり、地中には炭酸カルシウムなどのミネラルが豊富に含まれていることがわかっています。
関東の水は、ローム層のミネラルが溶け出すので硬度が高めになる、ということらしいです。へぇ。
九州の一部地域で硬度が高いのも、火山の存在が影響しているみたい。
え?東北は?北海道は?
ってなりますが、北国は雪解け水が豊富に流れ出るため、地下水が中和されて硬度が下がるとも言われているようです!なるほど!
水の成分って、地形や気候のいろんな影響を受けているんですね…!!!
3. 日本茶は軟水で淹れるべし!
硬水・軟水の違いは、地域の料理や飲み物なんかにも大きな影響を及ぼしております。
水の違いが、ヨーロッパの食文化と和食の差を生み出した、と言っても過言でないくらい!
ということで、基本的に和食には軟水が適していると言われます。
和食は、出汁に代表されるように、水を直接利用して調理するものが多いですよね。
硬水だとミネラルの苦味が強すぎて、料理の味に悪影響が出てしまうんですって!旨味を重視する和食ならではの感覚なのかも。
肉を煮込んだり、パスタを茹でたり、といったフレンチやイタリアンにおなじみの調理は、硬水の方が向いている場合もあるそうですよ。
ところで!
日本生まれの日本茶も「淹れる時に軟水の方がいい」とされます。
(何で急に日本茶の話になったかって?当ブログのメインコンテンツだからですよ!!笑 ぜひこっちの記事も読んでね。)
himekuri-nippon.hatenablog.com
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日本茶についても同様で、ミネラルが持つ苦味とかミネラル臭とかが風味を邪魔してしまう、と言われているんですね。(最近では、硬水の方が実は旨味を引き出すなんて話もあるんですけどね)
ただ、硬水の中には「一時硬水」と「永久硬水」というものがありまして…
「一時硬水」の場合は、煮沸することで硬度を下げることができるという耳寄りな情報が!
とは言え、どれが一時硬水なのかなんて素人にはわかりませんので、基本的には軟水を使用するというのがセオリーでしょう。
4. おわりに
今回は、水道週間特集の第2弾ということで「硬水と軟水の違い」について、たっぷりとご紹介してきました!
言葉自体は知っていても、意外と知らないことも多かったんじゃないでしょうか?
地域の地層や地形が水の違いを生み出し、それが食文化の違いに影響していく、ってなかなか興味深い話ですよね。
料理を作る際や、お茶を淹れる際には、ぜひ水の違いにも着目してみてはいかがでしょうか?
新たなマニアックな世界が広がりますよ!笑
今回はここまで!
(参考URL)
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