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【2020年6月3日】水道週間特集①〜日本における水道の歴史《後編》〜

《この記事の文字数:約4,100》

ちょっと読み応えアリ

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完結させるぞ!

どうも、chimonです。

 

6月1日〜7日は「水道週間」ということで、水道や水に関するトピックスをご紹介する「水道週間特集」をお送りしています。

 

(さっそく昨日は浮気したんですけど。笑)

 

ということで、今回は、一昨日の前編に引き続き「日本における水道の歴史《後編》」

 

■前編をまだ読んでいない、という方はこちらからどうぞ!

himekuri-nippon.hatenablog.com

 

3. 明治の水道改造大作戦!

(1)あの病気が大流行

明治に入ってからも、江戸時代に整備された水道がそのまま使われていた日本。

 

前編の最後では、「ある出来事をきっかけ」に水道が見直されることになったとご紹介しました。

 

 

「ある出来事」とは、江戸時代から度々日本を襲ってきた伝染病、コレラの大流行でした。

 

こちらの記事で、幕末から明治前半にかけて幾度となくコレラが流行し、日本の近代的な伝染病対策に大きな影響を及ぼしたということを紹介しています。

himekuri-nippon.hatenablog.com

 

コレラの流行は不十分な衛生環境が原因と言われており、特に感染者の排泄物から回り回って、飲料水に菌が入ってしまうことによる経口感染が多かったらしいです。

 

考えてみれば、江戸時代に整備された日本の水道ってのは、川から直接取水した水を重力に従うまま、都市部まで引っ張るというだけのもの…。

 

 

現代のような下水道が整備されていたわけではないので、排泄物に含まれる雑菌が上水に入ってしまう可能性は十分にあったようなんですね…!生水は飲むなってことですな…。

www.city.kodaira.tokyo.jp

 

明治となり開国されたことで、コレラ菌が海外から持ち込まれる頻度も増加

 

結果、明治初期には頻繁にコレラチフスなどが流行する事態に陥りました。

 

 

こうした事態を受けて、「江戸の水道のままじゃダメじゃね?」ってなります。でしょうよ!

 

 

(2)何かと先進的な横浜

コレラチフスの大流行は海外から持ち込まれた菌が原因なわけですから、流行の震源地は海外とつながる港町でした。

 

 

数ある港町の中でも、飛躍的な成長を遂げていたのが、東京にほど近い横浜

 

横浜はもともと数百人が暮らす小さな村に過ぎませんでしたが、開国後には急激な成長を遂げるのです。

 

しかし、横浜は埋め立てによって市街地を拡大していたため、良質な飲料水を得ることが難しい土地。

 

おまけに海外から菌が持ち込まれるので、ヨーロッパ生まれの近代水道の必要性が非常に高い場所でもありました。

 

 

ということで、当時の神奈川県知事はお雇い外国人だったイギリス人土木技師、ヘンリー・スペンサー・パーマーに水道建設を依頼。

 

 

1885年に建設がスタートし、1887年10月に日本初の近代水道が完成しました!

www.city.yokohama.lg.jp

 

ちょっと話は逸れますが、横浜は港町だけあって、他にも日本初と言われるものが大量にあるんですよね!

  • 新聞
  • 電話(東京〜横浜)
  • 鉄道(東京〜横浜)
  • 消防車、救急車
  • 警察署
  • ガス灯
  • 公衆トイレ などなど

kunitori-jp.net

 

これだけ日本初があると、文明開化は横浜から始まった、と言っても過言じゃないのかも。

 

 

(3)港町の水道を整備せよ!

横浜で初めて整備された近代水道は、急ピッチで全国の主要港湾都市を中心に整備が進められました。

 

横浜以降に整備された都市を確認してみると…

  • 函館(1889年)
  • 長崎(1891年)
  • 大阪(1895年)
  • 東京(1898年)
  • 神戸(1899年) 

大阪、東京を除くと、他は見事に港町ですな。

 

 

三大都市(東京・大阪・京都)および5つの主要港(函館・新潟・横浜・神戸・長崎)を合わせて「三府五港」と呼びますが、全てこれに含まれる都市です。

 

 

なぜか新潟は1910年、京都は1912年と、二都市だけ遅めなんですけどね。

www.city.niigata.lg.jp

www.city.kyoto.lg.jp

 

なんとなく想像できるのは、水源となる大きな川が近くを流れていて、比較的安全で綺麗な水が確保しやすかったからなのかな。(新潟:信濃川、京都:瀬田川宇治川桂川

 

 

(4)知らないものを受け入れるって難しい

これまでの水は「汲まなきゃいけないもの」だったのに、近代水道が整備されたことで「勝手に湧き出るもの」へと変化します。

 

言わずもがな、とんでもなく生活の質が向上することになったわけです。

 

さらに、近代水道整備の発端となった伝染病の大流行を抑える効果もあり、大正時代にかけて全国で水道の整備が進むこととなりました。

 

 

水道が敷設された地域は、1911年に17道府県、大正末期の1925年には42道府県まで急拡大!(ちなみに残る5県は岩手・石川・和歌山・愛媛・沖縄だそう)

 

 

面白いのが、近代水道が整備された地域で、当初給水申し込みが4〜5%程度だったという記録が残っていること!

 

「水は汲むもの!なんで勝手に出てくるんだよ?!ってか水道料金ってなんだよ?!払いたくねえよ」ってな感じで、最初受け入れられるのに時間がかかったらしいのです。笑

 

 

江戸時代の水道も、一応「水道料金」という概念はありましたが、身分とか間口の広さとかに応じて利用料金が決まっていました。水道メーターがないから、使用量なんてわかりませんからね!

 

■(参考)TOKYO MX「江戸の水道料金は何で決められた?水道橋で学ぶ江戸上水の歴史」

https://s.mxtv.jp/tokyomxplus/mx/article/20190623065501/

 

それが近代水道の整備によって、メーターが設置されて従量制の料金体系になりました。「使った分だけお金を払うってどういうこと?!パニック!!」って感じでしょうね。笑

 

 

新しいものを受け入れるのって、大変なことだよね。わかる。

 

 

4. そして日本は「水道大国」へ

(1)近代水道は一気に広まったわけではないのだ

ここまでの流れからいくと、昭和になればかなり水道が普及していたって思うじゃないですか?

 

でも、どうやら違うんですよね…!

 

 

今も基本はそうですが、水道は地方自治体の管理下なので、都市によって整備状況はまちまちなのです。

 

整備された道府県が増えたと言っても、実際に整備されたのは大都市や県庁所在地などの限られた都市部だけ。

 

 

そのため、大正末期の1925年で水道普及率は20.7%ほど。

 

 

戦時下に突入すると水道整備自体が止まってしまったため、戦後の1950年時点でも普及率は26.2%に過ぎませんでした。

 

 

横浜に初の近代水道が完成してから60年以上経過しても、なかなか普及が進んでいなかったんですね。今の生活から考えると、どうも想像つかないんですけど…。意外!

 

 

(2)水道も高度経済成長だっ!

そんなわけで、現在のように水道が当たり前のものとなるのは高度経済成長以降のことです。

 

下の厚生労働省のデータによると、水道普及率は1955年に36.0%、10年後の1960年には53.4%、そして1975年には87.6%まで急上昇!

 

高度経済成長に伴って、近代水道を使える人口が倍増したってことですね。勢いがスゴい。

 

■(参考)厚生労働省「水道普及率の推移」

https://www.mhlw.go.jp/content/000624219.pdf

 

 

1980年には普及率が9割を超え、2018年現在では98.0%と「ほぼ国民皆水道」を達成していると言えるでしょう。

 

裏を返すと、たった30年くらい前までは、水道が通っていない地域ってのが普通にあったってことです。

 

 

(3)実は地域差が大きい水道普及率

先ほど「ほぼ国民皆水道」というお話をしましたが、水道普及率っていまだに地域差が大きいことをご存じですか?

 

っていうか、普及率100%を達成しているのは東京・大阪・沖縄の3都府県だけなのです!

 

 

さすがに三大都市圏の府県は普及率が高め。

 

一方で、次のように9割程度という県も見られるのです。

 

東北や九州を中心に普及率が低い県が多いですね。

 

地方だと、湧き水や地下水を利用している場所も多いですから、水道を整備する必要がないっていう事情があるんでしょう。

 

 

5. おわりに〜日本の水道は転換期を迎えている!〜

前後編にわたって、日本の水道の歴史についてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?

 

意外と全国的に普及したのが最近の話、っていうのがわかりましたね!

 

「蛇口をひねれば水が出てくる」ということが、いかに素晴らしいことかという話です。ありがたや。

 

 

しかも、日本の水道は全世界的に見てもかなりの技術水準を誇っていると言われます。

 

海外に行くと「水道水はそのまま飲んじゃダメ」って国がほとんどですよね。全国どこでも水道水をそのまま飲める国って、日本を含めてたった11か国しかないそうな…!!

www.japanwater.co.jp

 

ただ、そんな素晴らしき日本の水道は、これから大きな転換期を迎えようとしています。

 

最大の要因は人口減少

 

都市部はまだしも、地方では空き家も増えていきますから、減収となる中で効率の悪い水道設備をいかに維持していくかというのは大きな課題です。

 

コンパクトシティを目指すにしても、愛着のある土地から離れるのが嫌という人も多いため、インフラとして何とか維持していく道を探らなければいけません。

 

 

加えて、約40兆円とも言われる全国の水道資産のほとんどは、前述のように高度経済成長期に整備されたものです。

 

つまり、整備から50年以上が経過しており、今後数十年で一気に改修の必要が生じるというわけ。

 

お金もない、人もいない。

 

こうした状況の中で水道のあり方を考えるということは、日本の都市の未来を考えるということでもあるのかもしれません。

 

 

「日本の都市」と言えば、こちらのシリーズもぜひ! 

himekuri-nippon.hatenablog.com

 

皆さんもこの「水道週間」を機に、当たり前に水が飲めることのありがたさと意義について、思いを巡らせてみてはいかがでしょうか?

 

 

今回はここまで!

 

 

(参考URL)

宇都宮市「世界と日本の水道・下水道の起源」通史編

https://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/013/818/kinensi06.pdf

 

■学会誌「EICA」エッセイ『水道普及は日本の文化を変えた』谷口尚弘, 2011

http://eica.jp/search/browse.php?file=c_15_4_73.pdf&id=923

 

www.city.toyohashi.lg.jp

 

news.yahoo.co.jp

 

 

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