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【2020年1月13日】祝・新成人!成人するって何だ?〜成人式の歴史〜

《この記事の文字数:5,564》

読み応えアリ!

どうも、chimonです。

 

新成人の皆さん、おめでとうございます!

そして成人の世界へようこそ。

 

 

なーんて、書いていますが…

成人式からかれこれ10年ほど経った今でも、自分は果たして「大人」になれているんだろうか?と感慨に浸ってしまうわけです。笑

 

そこで今回は「成人式の歴史」をテーマに、日本における大人になるための通過儀礼(イニシエーション)についてご紹介していきたいと思います。

 

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大人になったのかしら?

 

 

1. 成人式は新しい風習だった!

成人式といえば、住民票を置く地元自治体において開催される式典に参加する、というのが一般的ですよね。

 

中には「地元の学校に通っていなかった」「遠くに引っ越したので地元に帰れなかった」「引っ越し先に住民票を移してしまった」などなど、様々な理由で成人式に参加しなかったという人もいるのではないでしょうか。

 

 

それでは、こうした自治体単位で開催される成人式というのは、いつから始まったものなんでしょう?

 

 

一般的に成人式の始まりとされているのは、戦後間もない1946年11月22〜24日に埼玉県北足立郡蕨町(現・埼玉県蕨市)で開催された「第1回青年祭」です。

 

当時の青年祭開催概要を見ると、青年団長による開式の辞から始まり、町長式辞・県知事からの言葉・文部大臣からの言葉・来賓祝辞・成年者代表の言葉…。

と、すでに現在の成人式の形が出来上がっていることがわかります。

 

 

戦後からの歴史、ってかなり新しいですよね!

 

 

(と同時に、70年以上経過してもほぼ内容が変わっていないというのも、何だかすごい話だなと思いますが…)

 

 

蕨市での取り組みが好評で、そこから全国へ「成人式」が広がっていきました。

 

これを反映する形で、1948年に制定された国民の祝日に関する法律の中で「おとなになつたことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます」日として、1月15日を「成人の日」としたのです。

 

翌年の1949年1月15日から実際に施行され、2000年からは「ハッピーマンデー制度」によって、現在の「1月第2月曜日」へと変更されています。

 

 

ちなみに、発祥の地である蕨市では現在でも「成年式」という、発祥当時にちなんだ名前で呼ばれているそう。

 

 

ただこうなると、何で1月15日に設定したの?って疑問が湧きますよね。

 

 

2. 大人になるための通過儀礼

1月15日が成人の日となった理由を知るためには、日本における「大人になるための通過儀礼」の歴史を知る必要があります。

 

(1)男子の通過儀礼元服

男子が大人になるための通過儀礼として知られるのが元服(げんぷく)」です。一度は聞いたことがあるのでは?

 

「元」とは頭のこと、「服」とはそのまま服を身につけることを意味します。

 

つまり、頭に冠を身につけることを指す言葉なんですね。

 

その名前の通り、奈良時代あたりから、数え年で12歳から15歳くらいになった男子が氏神の前で頭に冠を授けられ、一人前の大人の仲間入りを果たす儀式が行われるようになりました。

 

 

厳密に言うと、一定以上の高貴な家柄じゃないと冠は被れなかったそうで、それ以下の位の家では烏帽子(えぼし)を被っていたそうな。

 

 

ただ、これはあくまでも貴族や武家の話であって、人口の大多数を占めていた農家などでは地方ごとに独自の成人儀礼があったとか。

 

 

基本的に元服は男子の通過儀礼なのですが、江戸時代以降は女性の成人儀式にも使われるようになっていきました。

 

 

(2)女子の通過儀礼「裳着」

男子の元服に対して、女子の通過儀礼として行われたのが「裳着(もぎ)」

 

これは平安時代の貴族において始まった風習のようで、十二単における「裳」という服を初めて着用するという儀式でした。

 

裳というのは、公式な場や目上の人がいる場に出る時に必ず着用する必要があったそうで…今でいうところのジャケット的なもの、と考えればいいかもしれません。

 

 

元服にしても裳着にしても「服装」というのが、成人の印と考えられている点が面白いところ。

 

確かに、ドレスコードのあるお店に行くと大人になった気がしますもんね。笑

 

 

裳着は、初潮を迎えた10代前半の女子が対象だったようですが、元服以上に年齢は決まっていなかったみたいです。男子と違って官職について働くということがなかったので、結婚しない限りは「大人になった」という証明がそれほど必要なかったんですね。

 

男子の元服は十二歳前後に行われたが、女子は出仕しないので裳着の定年齢がなく、十一〜二十三歳に行われた。結婚が決まると行うことが多い。

 

砂崎良著、上原作和監修『マンガでわかる源氏物語』P97より引用

 

うーん、アバウト!笑

 

裳を着るのと合わせて、歯を黒く塗る「お歯黒」や、眉毛を抜いて墨で細い眉を描く「引眉(ひきまゆ)」をして完了。

 

化粧をするのは大人の嗜み、ってところでしょうか。そこらへんの感覚は、現代にも通じているような気がしますよね。

 

 

なお、先ほどもお話しした通り、江戸時代以降は女子も「元服」と呼ばれるようになっていきました。

 

 

3. なぜ成人式は1月なのか

で、何で成人式が1月15日に制定されたのか、という話です。

 

(1)1月15日は元服記念日

結論から言いますと、先ほど紹介した男子の通過儀礼元服が行われたのが1月15日だったのです。

 

だから、成人式も1月15日に行われるようになったというわけ。

 

 

ん…?

 

 

その理由が知りたいんだって…?

 

 

ですよね。笑

 

 

 

その前にちょっと脱線。

 

では女子の裳着がいつだったのか、って話をしておきましょう。

 

これはですね、どうも日程が決まっていなかったようなんです。またもやアバウト!笑

 

しかるべき「吉日」に行われていたというのが実情。

 

男子は出仕する必要があったので、最初に位を授かる儀式が設けられていました。それに対して女子は出仕しませんから、結婚や出産というのが大人の仲間入りとして認識されていたわけです。

 

実際、裳着は結婚が決まると行われることが多かった、というのは前述の引用にもあった通りです。

 

 

(2)出ました、年神様!

さて、気になる元服が1月15日に行われていた理由について触れていきましょう。

 

これを解き明かすためのキーワードになるのが「数え年」です。

 

数え年とは「生まれた瞬間を1歳とし、以後毎年の1月1日を迎えるたびに年齢を1歳加算する」という年の数え方。

 

0歳っていうのはありません!

 

毎年1月1日、全員が一斉に歳をとるんですね。ある意味とても合理的。笑

 

 

元服や裳着の際にお話しした年齢の概念は、すべて数え年に基づくもの。現在の満年齢とは数え方が異なります。

 

 

そんな数え年の根底にある考え方が「その年の初めに、年神様(歳徳神)から1年分の生命とエネルギーを分けていただく」というもの。

 

出ました、年神様!笑

 

年神様(歳徳神)については、こちらの記事で触れています。

 

himekuri-nippon.hatenablog.com

 

(ちなみにお年玉の由来は、その昔鏡開きの際、年神様の魂が宿るお餅を「御年魂:おとしだま」と言い、子供の健やかな成長を願って分け与えたという風習とも言われています)

 

つまり、元服を迎える=大人になるということも、年神様のご加護のおかげという考え方があったんですね。

 

年神様は来訪神なので、新年を迎えると各家に訪れ、松の内が明けると帰って行くとされてきました。

 

かつての日本では全国的に、1月15日までが松の内とされてきましたから、このタイミングで年神様が帰って行くということになります。年神様をお送りする時に、無事子供が成長して大人になったことを祝う儀式として、元服が行われたということなのです!

 

 

ちなみに、江戸時代に幕府の命令が下されたことにより、関東地方は松の内が1月7日までに変更されていますが…

この点は、先ほどの記事の後編で詳しく解説しています。

 

himekuri-nippon.hatenablog.com

 

 

さらに掘り下げて、では何で1月15日に松の内が設定されたかという話。

 

1月15日は小正月(こしょうがつ)」と呼ばれます。

 

もともと日本は月齢を参考にする太陰太陽暦が用いられていたというのはよく知られていますが、さらにそれ以前には太陰暦が用いられていました。太陰太陽暦が使われるようになったのは、中国の影響が大きいんですね。

 

太陰暦を使用していた時代、望の日(満月の日)を朔の日(月の1日)としていたそう。太陰太陽暦において満月の日は、毎月15日(いわゆる十五夜)ですから、かつての日本における新年は旧暦1月15日だったのです。

 

だから、この日を「小正月」として特別視してきたというわけ。

 

 

小正月元服が行われるようになり、それがずっと受け継がれ、戦後になって1948年の祝日に関する法律の中で成人の日がこの日に設定された…

 

 

中国から暦が入ってきたのって、仏教が伝来した飛鳥時代あたりの話。

 

ということは、1500年以上昔の暦の名残が、これからの未来を担う若者たちの儀式に見られるなんて…すごい話だと思いませんかっ?!?!?!(興奮!)

 

 

4. 20歳は大人だって誰が決めたんだ!

成人式が1月である理由がわかったところで、もう一つの疑問が「なぜ20歳を成人としているのか?」という点!

 

尾崎豊あたりが「20歳は大人だって誰が決めたんだ!」って歌ってそう。笑

 

 

この基準が初めて公式に登場するのは、1876(明治9)年に発布された「太政官布告第41号」だったようです。明治に入ってからなんですね〜。

 

明治初めにかけては、多くで15歳までを幼年とする流れがあったようです。とは言え、地域によって年齢差はあり、20歳あたりを基準とする地方もあったようですが。

 

要するに、統一的な基準はなかった!ということ。

 

 

1896(明治29)年に制定された民法の中で「第三条 満二十年ヲ以テ成年トス」と定義されたことで、2020年現在、20歳から大人!と決められています。

 

 

この経緯について、法務省民法の成年年齢が20歳と定められた理由等」という資料で、様々な検証がなされていました。

 

簡単にまとめると…

 

  • 正直、細かいところは何とも言えない。笑
  • 当時の欧米諸国では、多くが21歳成年制を採用していたので、それに近づけた。
  • 一方で日本は古くから15歳を基準とすることも多く、いきなり21歳にすると言うのも…ということで、一部の地域での採用実績もあった20歳を選んだ。
  • 欧米より少し若い年齢にしたのは、当時の日本における平均寿命の短さも関係していたと考えられる。(例えば20世紀初頭イギリスの平均寿命:男51.5歳・女55.35歳に対して、19世紀末の日本の平均寿命:男42.8歳・女44.3歳)

 

欧米の基準を参考にしたと言うのは予想がつきますが、結構曖昧。笑

 

まあキリのいい数字だった、と言うのは大きいんでしょうけど。

 

それにしても婚姻年齢の基準は、20歳よりも男女ともに低いわけで。そこら辺の見解は統一されなかったと言うのも、昔からの名残が大きい気がしますね。

 

 

いやあ、でも当時の平均寿命から考えると「人生折り返し地点で初めて大人になれる」ってすごい感覚ですよね。

 

今で言うなら「人生に惑わなくなって(不惑)、初めて大人です」って言われているようなもん。。

 

一生大人になれない気がする。笑

 

 

5. まとめ〜成人の定義が変わる!〜

ここまで成人式と、通過儀礼の歴史について見てきましたが、今まさに成人の概念が再び変えられようとしています。

 

2022年4月1日から、成人年齢を18歳に引き下げることを目的とした「民法の一部を改正する法律」が施行されることが決定。

 

明治から長らく続いた「20歳=大人」の構図が変えられることになります。

 

 

結局「大人になる」ってことは、ここから大人ですよという、大人が決めた一方的な基準に過ぎないとも言えますね。

 

 

文部科学省「令和元年度学校基本調査(速報値)」によると、最新の大学進学率は53.7%(令和元年度)と過去最高を記録しており、半数の人は20歳だろうが18歳だろうが、まだ学生の身分ということになります。

 

 

かつては、結婚や出仕(就職とほぼ同義と言える)によって、物理的に大人の仲間入りをしていたと言えますが、現在の人々はどうなんでしょう?

 

 

成人式で暴れる新成人たちのニュースを見ても、ハロウィンで暴れる若者たちを見ても、良い歳して酔っ払って他の人に殴りかかる「大人」と何が違うんだろう?と思ってしまうのも事実。

 

 

孔子が言うように、30だろうが40だろうが50だろうが60だろうが、常に「さらに成長していかなければならない」って気持ちを捨てちゃいけない、と思うわけです。

 

本当の「大人」は、制度によって決まるものではなく、本人の行いや考えによって周りから評価されて認められて決まるものじゃないか。

 

孔子は70代で亡くなっていますが、現代においては人生100年なんて言う以上、80になっても90になっても「大人」の冠に胡座をかいていてはいけない、と思います。

 

 

最後になりましたが、新成人の皆さん、本当におめでとうございます。

 

そしてようこそ、自分自身の責任で人生を決められる、最高に楽しい「大人」の世界へ!

 

 

(参考文献)

・砂崎良著、上原作和監修『マンガでわかる源氏物語池田書店, 2019

 

 

※本ブログの記事は、参考文献等の記載事項を基にして筆者独自の考えを交えて展開するものです。歴史的事象には諸説あるものが多いため、あくまでも一つの説として捉えていただきますようお願いいたします。