【2020年5月18日】「五月晴れ」「五月雨」「五月蝿い」…やたらと多い、5月の言葉についてまとめてみた。
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どうも、chimonです。
早くも5月も後半戦に差し掛かっているわけですが、ふと「5月にまつわる言葉って多いよなあ」なんて思ったのです。
「五月晴れ(さつきばれ)」
「五月雨(さみだれ)」
「五月蝿い(うるさい)」
他の月は、あまり言葉として出てくるイメージはないんですけど。(知らないだけかも。笑)
ってことで、今回は、これらの「5月にまつわる言葉」についてまとめていこうと思います!
1. 「五月晴れ」って言うけど、そんな晴れてなくない?
まず最初に取り上げる言葉が「五月晴れ」。
現在主に使われている意味としては、まさに「5月のよく晴れた天気」ということ。まんまですな。
確かに、5月は立夏もあって「初夏」と言うのにふさわしい季節ではありますが…
himekuri-nippon.hatenablog.com
にしても、わざわざ「五月晴れ」なんて言葉にするほど、晴れてますかね?
偶然にも、記事を書いている2020年5月18日の東京は、雨です。笑
真相を探るべく、気象庁が発表している過去の東京の天気について調べてみました。
参考にしたのは、東京管区気象台「東京の日別天気出現率」!
1981年〜2010年の30年間なんで、ちょっと古いデータではありますが…それほど変化はないはず。
で、5月の天気出現率について平均を求めてみると…
晴天率43.8%。
低い。笑
データを見た感じ、一番晴天率が高そうな12月の平均が77.3%であることを考えると、決して取り立てて言葉にするほど「晴れる月」とは言えなそうです。
といったところで、言葉の意味に立ち返ってみましょう。
と言うのも、「五月晴れ」という言葉には2つの意味があるのです。
1つ目は、冒頭でお話しした「5月のよく晴れた天気」。
そしてもう1つの意味が「梅雨の晴れ間」。
ん?
実は、2つ目の意味こそが、「五月晴れ」の元の意味。
今では「五月」と書いて「さつき」と読みますが、かつては「皐月」であり、要するに旧暦の5月を指していました。
旧暦の5月=今で言うところの6月に近いので、本来は梅雨時期の貴重な晴れ間を指す言葉だったのですね!
それなら、わざわざ言葉にしたのも納得だ。
ただ、新暦になってからは「五月晴れ=新緑のさわやかな時期の晴れ間」と誤用されるようになり、いつの間にかそっちがスタンダードになってしまったというわけ。
今では、NHKも新しい意味の方で使っているそうです。
2. それなら「五月雨」は想像つく
五月雨を 集めてはやし 最上川
松尾芭蕉のあまりにも有名な句で知られる、この「五月雨」という言葉。
これは、先ほどの「五月晴れ」という言葉の元の意味を考えれば、なんとなく想像がつきますよね。
「五月雨」も旧暦5月=今で言う6月の頃に降る雨、要するに「梅雨の長雨」のことを指すわけです。
字面から受ける印象とは異なり、ぜーんぜんさわやかな雨ではありません。むしろ、ジトっと身体にへばりつくような、梅雨の蒸し蒸し雨です。笑
富士川・球磨川と並んで「日本三大急流」に数えられるほど、流れが急なことで有名です。
芭蕉は、凄まじく速く流れる最上川を見ながら、「まるで梅雨の長雨を全部集めちゃったくらい、スゴい量の水が流れちゃう急流だなあ、最上川は。」ってな句を詠んだ、ということなのですね。
五月雨の合間の貴重な晴れ間が「五月晴れ」ということで、「五月雨」と「五月晴れ」は本来セットでした。
で、不思議と「五月雨」の方は、今でも梅雨の長雨という元来の意味で使われています…。
現在では、どちらかと言うと「だらだら続くこと」の例えとして使われることの方が多いかもしれません。「五月雨式」なんてよく聞きますもんね。
ちなみに「さみだれ」という言葉は、「さつき」と「水垂れ(みだれ)」から来ているそうな。
「水垂れ」って言うくらいだから、昔の人も「梅雨って長いなあ…いつまで降るんだろ…怠いなあ…」って思ってたのかもしれません。笑
3. ってことは「五月蝿い」も…?
最後にご紹介するのは「五月蝿い」。
何となくここまでの流れで想像がつきますが、旧暦6月は梅雨の時期、ということでハエが活発に活動する時期です。
実際、ハエが最も生き生きとする季節(笑)は6〜7月なんだそう。
確かに、ジメっとした時期に、ハエが飛んでてイラッとするっていうのはありがちな気がします。
どうも、これはだいぶ昔から日本の風物詩だったようで…。
古代より、こうした「旧暦5月に群れて飛ぶハエ」のことを「五月蝿(さばえ)」と呼んでいました。
ちなみに、古事記でも「さばえ」が登場します。(漢字は違うけど同じ意味)
是に万の神の声は、狭蠅(さばえ)なす満ち、万の妖(わざはひ)悉く発りき。
『新版 古事記 現代語訳付き』P43より引用
「さばえなす」で「5月のハエのように」という意味を表し、 「うるさい」や「荒ぶる」といった意味を持つ言葉に連なって使われていたようです。
ただ、この時点では「うるさい」という読み方はありません。
「五月蝿い」と書いて「うるさい」と読まれるようになったのは、明治時代になってからのこと。
夏目漱石が最初に使ったという説もありますが、どうやらそれよりもっと前、1895年に発表された樋口一葉の短編小説「十三夜」の中で使われたのが初めて、とされているようです。
へぇ。
要するに、樋口一葉さんが当て字として使ったのが広まったってことになりますね。
「現代(いま)」「運命(さだめ)」「地球(ほし)」
そして、「五月蝿い(うるさい)」。笑
ふざけてるようだけど、こういうことですよ。面白いね、漢字って。
4. おわりに
今回は5月にまつわる言葉をお送りしてきましたが、5月を題材にした言葉が多いのは、旧暦5月=梅雨が人々にとって印象的な季節だったから、ということが言えそうですね。
今の5月とは関係ないってこと…。笑
ただ、大昔の日本人も「貴重な晴れ間だ!やった!」「梅雨終わらないかなー」「梅雨のハエはうるさいなー」なんて思ってたんだとすると、脈々と受け継がれる日本人マインドを感じて、ちょっと嬉しくなるのはchimonだけでしょうか?
それと同時に、暦が変わっても言葉だけはそのまま生き続けている、という事実も興味深いですよね。
皆さんも、いろんな言葉に込められた元の意味に思いを馳せてみると、新たな発見があるかもしれませんよ!
といったところで、今回はここまで!
(参考資料)
・中村啓信訳注『新版 古事記 現代語訳付き』角川ソフィア文庫, 2009
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chimon