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【2020年4月17日】なすび記念日に寄せて〜ナスと日本人〜

《この記事の文字数:約4,100》

 ちょっと読み応えアリ

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ナスをかぶってみた。

どうも、chimonです。

 

今日って何の日なんだろうな〜と調べていたら、4月17日は「なすび記念日」らしい!

 

「良(4)い(1)な(7)すび」って語呂合わせの他にも、ちょっとした理由があるということが発覚しました。

 

chimonはナス大好きなんですが、奥さんが大の苦手なので笑、我が家ではあまり食卓に上がることはありませんが…

 

そんな、ナスと日本人の歩みをご紹介したいと思います!

 

1. ナスをこよなく愛した徳川家康

(1)初ナス!

冒頭でご紹介した通り、4月17日が「なすび記念日」となったのは語呂合わせが一つの理由。

 

もう一つの理由が、徳川家康の命日(旧暦)だからというものらしいのです。

 

 

…なんで?

 

 

と言うのも、徳川家康はナスが大好きだったみたいナス。笑

 

 

この後ご紹介しますが、江戸時代以前のナスは超高級品でした。

 

 

特に、その年初めて獲れる「初ナス」は、江戸っ子たちにとって特別な食べ物。

 

徳川家康も初ナスを大層気に入っていたそうで、毎年初ナスが収穫されると家康の元に献上されていたのだとか。

 

家康が大御所時代を過ごした駿府城のある駿河国は、「折戸ナス」の名産地として知られており、この初ナスが家康の大好物だったんですね。

 

ちなみに、折戸ナスは明治に入って一度栽培が途絶えてしまいましたが、2007年に復活を遂げています!

www.ja-shimizu.org

 

鉄腕DASH」で城島さんが「初物を食らって長生き!」みたいな企画をやってましたが、江戸っ子たちは、初物をとても大切にしていました。

 

 

中でも重視していたのが、初鰹・初鮭・初松茸、そして初ナス!

 

 

初鰹と並んで、初ナスはめちゃめちゃ人気があった模様。

 

現在で言うところの1本10万円くらいで取引されることもあったんですって…!!!

 

 

…ナスが10万円?!?!笑

 

 

箱根を超えて、江戸に初ナスが出回る時期が、旧暦3月。今の4月でした。

 

 

つまり…

  • 「良(4)い(1)な(7)すび」の語呂合わせ
  • 初ナスをこよなく愛した徳川家康の命日(旧暦)
  • 初ナスの出回る時期

という3つの理由から「今日はなすび記念日」ってことになったんですね!

 

 

(2)一富士二鷹三茄子

そうそう、ナスと言えば、初夢で見ると縁起が良いものとして登場します。

 

いわゆる一富士二鷹三茄子ってやつですね。

 

 

この言葉が生まれたのも江戸時代と言われており、由来として次の3説が唱えられています。

 

  1. 駿河国で高いものTOP3が「1位:富士山、2位愛鷹(あしたか)山、3位:折戸ナスの初物の値段」と言われていたため、そこから縁起の良いものとして定着したという説。
  2. 駿河国の名物を挙げたことわざが元になったという説。
  3. 徳川家康が好きだったものを3つ挙げたという説。

 

まあ、どの説だとしても、徳川家康駿河国っていうキーワードは変わらない模様。

 

ここで出てくる「三茄子」っていうのは、先ほどの折戸ナスの「初ナス」を指していると考えて間違いなさそうです。

 

 

2. ナスさん、どこからやってきた?

(1)インド生まれのナスさん

日本人に愛されるナスですが、原産地はインド東部と言われています。

 

なんだかインド原産の食べ物って多い気がします…!

 

 

さすがインド生まれだけあって、あったかい地域で育ちやすい野菜です。

 

夏〜秋にかけての野菜ですし、促成栽培(ビニールハウスなどで、通常の旬よりも早めに収穫できるようにする栽培方法)の代表的な作物でもありますからね。

 

 

ナスの紫色は、太陽の紫外線から実を守るために生成される、アントシアニンという色素によるもの。

 

実際、日光を当てないように育てると真っ白なナスができるらしい!言われてみれば、ヘタで隠れてる部分は白いですね。

 

ナスが紫なのも、暑い地域への適応の結果なわけで、インド原産っていうのは納得かも。

 

 

(2)日本に流れ着いたナス

インド原産のナスは、最初に中国や古代ペルシャアラビア半島などインド周辺地域に伝わっていきます。

 

中国には紀元前5世紀あたりには伝わっていたと見られ、紀元5世紀あたりには中国・アラビア半島・アフリカで栽培されていた記録があるらしいです。

 

 

日本では、平城京の遺跡から「ナスの粕漬けを進呈したよ」という記録が見つかっており、遅くとも奈良時代にはナスが栽培されていたと考えられています。

 

実際には、それよりもっと前の4〜6世紀ごろには伝わっていたみたいですね。

 

これって野菜が日本に伝来した時期としては、最古の部類に入ります。それだけ、日本人にとってナスはおなじみの野菜ってこと!

 

 

どこからもたらされたかっていうのが結構謎で、一般的には①中国から入ってきた朝鮮半島から入ってきた③東南アジアから入ってきた、というバラバラな3つのルートが唱えられています。

 

 

(3)ナスブラザーズ

何でこんなルートが色々あるの?って思いますが、おそらく地方ごとに違うナスが育てられてきたからではないか、というのがchimonの考え。

 

 

「ナス」って言っても、ものスゴい数の種類があるっていうのはご存知の方も多いのではないでしょうか?

 

というか、出身地によって想像するナスの形が違うかもしれません。

 

農林水産省のナスに関するページに、種類と画像がたくさん載ってますので、ナスマニアの皆さんはぜひどうぞ。笑

www.maff.go.jp

 

現在、日本で最も多く栽培されているのが「千両ナス」

 

前回の東京オリンピック東海道新幹線と同じ1964年に誕生した品種で、栽培しやすく収穫量が多いことから幅を利かせている「中長ナス」の一種です。

 

日本茶で言うところの「やぶきた」みたいな位置付けですかね。

www.ocha.tv

 

一方、東北から北陸にかけて広く栽培されているのは「丸ナス」。京野菜として知られる「賀茂ナス」なんかも、丸ナスの一つですね。

 

九州では「大長ナス」と呼ばれる、「あらご立派」って言いたくなるような大きさのナスが栽培されています。笑

 

他にも、大阪の「泉州水ナス」なんかは生食で食べられるナスとして有名ですよね。chimonも水ナスの刺身が大好きです!

 

 

ここまで見ると分かる通り、日本のナスは地域ごとにさまざまな品種があるみたい。

 

要するに「地ナス」的な感じ。だから、別々の3つのルートを通して、それぞれの地域に根ざしたナスが生まれたんじゃないかと予想。

 

実際、日本には180種類以上のナスがあるそうな!

 

 

日本人って、伝統的にナスが好きみたいです。

 

 

(4)I'm eggplant.

ところで、アフリカやペルシャまで広がったナスですが、ヨーロッパで栽培されるようになったのは、日本よりずっと後の13〜15世紀ごろのこと。

 

今ではヨーロッパでもおなじみの野菜ですが、当初は食べると言うよりも、綺麗なお花を愛でる観賞用の作物だったと言います。

 

 

やがてナスはアメリカに渡り、そこで品種改良が盛んに行われました。

 

数多くの品種が誕生した中で、「ブラックビューティー」という品種が日本にもたらされ、日本流にアレンジされていきます。

 

これが「米ナス」と言われるやつですね!

 

 

ちなみに…米ナスと日本の丸ナスって簡単に見分けられるらしいのです!

 

 

その違いはヘタにあり!

 

日本の丸ナスは、ヘタが実と同じ、濃い紫や黒色をしています。

 

一方の米ナスのヘタは緑色!

 

 

言われてみれば、普段食べているナスはヘタが黒っぽいかも。

 

 

3. お高く止まってたおナスさん、庶民派に転向

先ほどちらっとお話ししましたが、江戸時代以前はナス=高級品でした。

 

貴族に献上される作物だったんです。

 

 

もともとは「ナス」ではなく「なすび」と呼ばれていました。

 

「なすび」という名前の由来としては…

  • 夏に実がなるから「夏実」となり、それが訛って「なすび」となったという説。
  • 実が酸っぱいということで「中が酸っぱい実」「中酸実(なかすみ)」となり、転じて「なすび」となったという説。
  • 中国から伝来した際、すでに「奈須比」と呼ばれていたという説。

などが知られています。

 

ふーん。

 

 

じゃあ、何で「ナス」って呼ばれるようになったか?

 

これは、室町時代ごろから宮中に仕える女中の間で使われた、「女房詞(にょうぼうことば)」が由来と考えられています。

 

食べ物や衣服、日用品を指す隠語のようなもので、高貴な身分の女性が使った「お上品な言葉」

 

 

女房詞の中には、今でも使われている言葉がたくさんあります。

 

例えば「おかず」「おでん」「おかか」といった「お」のつく丁寧言葉、「しゃもじ」「ひもじい」など「もじ」のつく言葉、そして「ナス」など。

 

 

高貴な女性が使う言葉に「ナス」があるということは、食べられる身分が限られていた=高級品だった、という証拠でしょうね。

 

 

そんなお高く止まってたナスさんが庶民派野菜になるのが、江戸時代のことです。

 

 

江戸時代になってようやく全国的に栽培されるようになり、庶民にも手が届く野菜になりました。

 

 

江戸時代に農業技術が進歩したのが大きな理由ですが、もう一つ影響を与えたのが、促成栽培が発達したこと。

 

 

今や促成栽培の代表的作物であるナスですけど、まさにこの技術が発達したのも江戸時代。

 

 

何でかって?

 

 

ここまで読んできた中にヒントがあるんですよ!

 

 

 

それが「初物」です。

 

 

「初ナスが高値で取引された」というお話をしましたよね。一本10万円って聞いて、驚きましたよね?笑

 

 

農家の立場だったら、どう思います?

 

 

「どこよりも早く初ナスを出荷して、一儲けしてやろう!」って考えますよね。

 

ということで、初ナスをなるべく早く出荷すべく、促成栽培が発達していったというわけなのです。

 

 

いやあ、ナスも商売の波に翻弄された野菜だったのね。

 

イチゴを思い出しますね。笑

himekuri-nippon.hatenablog.com

 

 

4. おわりに

さて、今回は「なすびの日」ということで、ナスと日本人の関わりについてご紹介してきました。

 

ナスが、いかに日本人と深く関わってきたか、おわかりいただけたのではないでしょうか?

 

今や年中食べることのできるナスですが、お高く止まってた時代を思い浮かべると、ありがたみが湧いてくる…気がします。

 

 

なぜか私はナス嫌いの人と縁があるんですが笑、ナスは美味しいんだよ!!!油と合わせると最高なんだよ!!!笑

 

 

ということで、今回はここまで!

 

 

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chimon

 

 

※本ブログの記事は、参考文献等の記載事項を基にして筆者独自の考えを交えて展開するものです。歴史的事象には諸説あるものが多いため、あくまでも一つの説として捉えていただきますようお願いいたします。