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【2020年2月18日】雨水に寄せて〜暦についての小話〜

《この記事の文字数:約3,400》

 サラッと読める

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朧月夜、いい歌だよね。

どうも、chimonです。

 

明日は二十四節気の一つ「雨水(うすい)」。明日ですよ!

間違えて今日更新しちゃった、なんてことはないから。断じて!ないから!!

 

立春を特集したばかりだと思っていたら、もう2週間経つのですね…早い…。

 

今回は「雨水」の基本を押さえた上で、七十二候や暦の近代史についても深掘りしていこうと思います!

 

 

1. 雨水って何じゃらほい

そもそも「雨水」って何のこっちゃ、というお話から始めましょう。

 

 

冒頭でもご紹介した通り、雨水というのは二十四節気の一つ。

 

二十四節気は、古代中国に起源を持つ「太陽の運行を基にした季節の進行を表す暦」のこと。

 

 

月の運行を基にしていた旧暦だと、季節と暦が合わなくなってしまうことがあるため、農作業の目安として重宝されたのでしたね。

 

 

で、雨水の前の二十四節気立春

 

このあたりの話は、立春にアップした記事で詳しく解説しています。

himekuri-nippon.hatenablog.com

 

「雨水」は読んで字のごとく、「空から降るものが雪から雨に変わり、降り積もった雪も溶け出す頃」という意味合いがあります。

 

 

ぶっちゃけ地域によるでしょう、って感じはしますが。笑

 

と言うより、もはや元は中国の暦ですから、厳密に言うと日本とは少し季節の感覚がズレています。

 

 

今年は暖冬傾向が強すぎて、雨水どころか雪が無い…って言おうと思ったら、ここ数日は日本海側を中心に大雪なんですよね。うーん…(後述しますが)現在の七十二候が定められた明治と比較して、温暖化が進行しているっていうことの現れなんでしょうか。

 

 

まあ、ただ「寒さの底」だった立春に比べて、少しずつ春らしくなっていく時期というのは感覚的にも合っているような。

 

 

2. この時期の七十二候がとても美しい件

二十四節気は、中国式で日本の四季とは少しズレているという話でしたが、元の形式を変更することなく現在まで使われてきました。

 

一方で、江戸時代や明治時代、日本の四季に合わせて変更された暦があります。

 

 

それが「七十二候」

 

七十二候も元は古代中国で生まれたもので、二十四節気をさらに三分割してより細かい季節を表し、農作業の参考にしていたのです。

 

日本には、平安時代ごろ二十四節気とともに伝来した模様。

 

 

とは言え、正直あまり定着していなかったようです。

 

その証拠に日本では、二十四節気を補足する形で「雑節」と呼ばれる日本独自の節が導入され、日本ならではの季節を表現していたくらいですからね。

 

雑節についても、先ほど紹介した「立春」記事で取り上げていますので、ぜひ。

himekuri-nippon.hatenablog.com

 

容易に想像つくことですが、二十四節気ですら日本の季節との違いを感じるのに、さらに細かい七十二候なんて言わずもがな…。

 

 

試しに、中国の七十二候の一部を見てみますと…

 

「鷹が鳩に姿を変える」

「戴勝(ヤツガシラ)が桑の木に止まって蚕を生む」

「雉が海に入って大蛤になる」

 

…???笑

 

確かに、これは日本的な感覚ではない!!納得や!!笑

 

 

ということで、江戸時代に日本の感覚に合わせて内容が見直されました。

 

そして、現在使われている七十二候は、明治に入ってから定められた「略本暦」において大幅に改定されたもの。

 

つまり、日本の明治時代における季節感が反映されていると考えられますね。

 

 

これがですね、まあ美しいんですよ。

 

個人的には、まさに雨水の時期が特に美しいと感じております。

 

二十四節気を三分割したものですから、雨水にも初候・次候・末候という3つの七十二候が定められています。

 

 【雨水】

  • 初候:土脉潤起(つちのしょううるおいおこる:雪が春雨に変わり、大地が潤いはじめる)
  • 次候:霞始靆(かすみはじめてたなびく:春霞が初めて立つ)
  • 末候:草木萌動(そうもくめばえいずる:草木が芽生え始める)

 

 

末候の「草木萌動」は中国由来のものですが、最初の2つは日本固有のものです。

 

 

どうです?美しくないですか?!笑

 

 

「かすみはじめてたなびく」なんて、もう「朧月夜」の世界ですよ!

 

なのはーなばたけーーに

いりーひうすれー

みわたーすやまのーーは

かーすーみふかしー♪

 

 

取り乱しました。笑

 

chimonが最も好きな唱歌なんです。綺麗だから。

 

 

3. 神宮暦?!

ここで、ちょっと脱線してみます。笑

 

 

先ほど「現在の七十二候は、明治時代の「略本暦」に基づいている」というお話をしました。

 

この「略本暦」っていうのが何なのかって気になりますよね?

 

気になるはずです!

 

 

 

で、調べてみたところ、「本暦」に対する「略本暦」なんですね。

 

じゃあ「本暦」とは何かと言うと、簡単に言えば「政府公認で編纂・発行された冊子形式の暦」のこと。

 

江戸時代までの暦では、暦注(れきちゅう)という陰陽道などに基づいた吉凶判断が書かれていました。現代で言うところの「今日の運勢は!」みたいな話でしょうか。笑

 

 

一番わかりやすいのが、大安・仏滅といったような六曜ですね。これも暦注の一種です。

 

 

ただ、明治維新によって「欧米列強に追いつけ、追い越せ!」となると、暦注は「非科学的なもの」として暦から排除されることになりました。

 

本暦から暦注が排除されたものの、庶民からすると「えー、吉凶判断できないじゃん!不便!」ということになり、結局六曜なども併記された小型版の暦冊子が発行されます。

 

「占いカウントダウン」とか「スッキりす!」がもし突然終わっちゃったら、なんか1日乗らないじゃん!みたいな感じ?笑

 

これが「略本暦」と呼ばれるもの。

 

 

 

何が面白いって、こうした暦って伊勢の神宮で発行されていたという点なんですよね!

 

 

平安時代以降、全国の有名社寺に所属して参拝客のお参りや宿泊所の世話をする「御子(おし・おんし:伊勢は「おんし」と読む)」という人が見られるようになります。

 

 

江戸時代になると、伊勢の御子が「伊勢暦(いせこよみ)」という暦冊子を作って、参拝客に配っていました。

 

要するに、伊勢の神宮で暦を発行する風習があったということ。

 

 

明治に入ると御子制度が廃止され、伊勢暦も配られなくなります。

 

 

代わって、頒暦商社(はんれきしょうしゃ)と呼ばれる暦冊子を独占的に発行する会社が政府によって立ち上げられたのですが、1883年に再び宮司(じんぐうしちょう:伊勢神宮の事務を司る機関)から暦が発行されることになりました。

 

 

国の正式な暦が、伊勢の神宮から発行されるって、もはやよく分かりません!笑

 

 

この暦を神宮暦と呼びます。

 

 

1883年に暦の発行元が神宮司庁になったのと同時に、一枚刷りの略暦に関しては発行が自由化されたらしいのですが…

 

裏を返せば、それまでの10数年は頒暦商社以外、暦を発行しちゃいけなかったってことですな!!

 

やっぱり暦って、国家権力にとっては非常に重要な意味を持つものなんですね。

 

 

 

ちなみに、冊子形式の暦を含めて自由に発行できるようになったのは、なんと戦後の1946年!

 

え!!!笑

 

 

発行元も、宮司庁から国立天文台の原型である東京天文台に変更されています。

 

 

そうあるべきだよね、うん。

 

「科学的」って言ってる割に、神社で発行してたってどういうこっちゃ。笑

 

 

 

正式な暦としての役割を終えた神宮暦ですが、現在でも大暦(元は本暦)、小暦(元は略本暦)として販売されています。

www.isejingu.or.jp

 

 

4. まとめ

雨水に寄せて、ということで暦についての小話をお伝えしてきましたが、要点をまとめるとこんな感じ。

 

  • 二十四節気の一つ「雨水」は、「雪が雨に変わる頃」を指す暦。
  • 二十四節気は中国から伝来したまま使われているが、三分割した七十二候は、江戸時代と明治時代、日本の季節に合わせて変えられた。
  • 現在用いられている七十二候は、明治時代に制定された「略本暦」が元になっている。
  • 本暦や略本暦は、戦前伊勢の神宮によって発行される神宮暦だった。
  • 戦後になって、現在の国立天文台が暦を担当するようになった。

 

こう考えると、暦がいかに権力と結びついていたかということと、伊勢の神宮が政治的な意味を帯びていたということがよく分かりますね。

 

 

「神宮って何でそんなにスゴいの?」って思った方は、こちらの記事がオススメです。

himekuri-nippon.hatenablog.com

 

 

暦を決める権利を持つということは、「時間すらも決めることができる」という最強の権威と考えられるのかもしれませんね。

 

今後も暦については特集していくつもりですので、お楽しみに!

 

 

では!!

 

 

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 ▽

chimon

 

 

(参考資料)

神社本庁監修『神社検定公式テキスト①『神社のいろは』』扶桑社, 2012

 

 

※本ブログの記事は、参考文献等の記載事項を基にして筆者独自の考えを交えて展開するものです。歴史的事象には諸説あるものが多いため、あくまでも一つの説として捉えていただきますようお願いいたします。