【2020年1月25日】超意訳!中学生でも読める古事記vol.3〜黄泉の国編〜
《この記事の文字数:4,054》
ちょっと読み応えアリ
どうも、chimonです。
この土日は、2日連続「超意訳!中学生でも読める古事記」シリーズをお届け!
とにかく意訳なので笑、軽く「へえ」くらいな気持ちで読み進めてもらえれば嬉しいです。
前回をまだ読んでいない方はこちら!
himekuri-nippon.hatenablog.com
最初から読みたい方はこちら!
himekuri-nippon.hatenablog.com
今回は、イザナキさんが亡き妻・イザナミさんを追いかけ、黄泉の国(よみのくに)へと向かう「黄泉の国編」をお届けします。
※斜字:補足、もしくは原文にないchimonオリジナル解釈&ツッコミ笑
7. 見るなって言われると見たくなる
火の神を産んで、あの世へと旅立ってしまったイザナミさん。
イザナキさんはどうしても妻にもう一度会いたくて、イザナミさんの後を追いかけ、あの世=黄泉の国へと向かいました。
黄泉の国へたどり着くと、御殿の閉ざされた門戸の向こう側まで、イザナミさんがお出迎えしてくれました。
扉越しに、イザナキさんは御殿の中のイザナミさんへ語りかけるのでした。
「愛しい愛しいイザナミー!君と国を作ったじゃない…?あれ、まだ終わってないんだヨォォォォォォ!まだ子作りしたいよぉぉぉぉ!だから、帰ってきておくれよぉぉぉぉ!」
「君と一緒にまだ国を作りたい」的なことを言ってるんですけど、これって要するに…。イザナキさんってやっぱり真っ直ぐな漢。
これを聞いたイザナミさんは、このように答えました。
「ああ…ちょっと遅かったのよ、イザナキさん…あたし、黄泉の国のカマドで炊いたご飯を食べちゃったの…だから、元の国には戻れないの…」
「でも、愛しいあなたがここまでわざわざ来てくれたんだから、このままじゃ悪いわよね。私も帰りたいわ!だから、ちょっと黄泉の国の神様と交渉してくるわ!」
「ただ…その間、私の姿を決して見ちゃダメよ…!決して、決して!」
イザナキさんは、イザナミさんの言葉を受けて、その場でしばらく待つことに。
でも、なかなか帰ってきません。
なかなか帰ってきません。
なかなか帰ってきません。
なかなk…
「待てん!!!!」
やっぱり!!!!!笑
待てなくなってしまったイザナキさんは、長い髪を束ねるのに使っていた左の櫛の太い歯を1本引き抜いて、それに火をつけて明かり代わりにします。
明かりを頼りに御殿の中へと入っていくイザナキさん。
イザナミさんの言いつけを破って、その姿を盗み見てしまうのでした…。
「…イザナミ〜?終わった〜?待ちくたびれちゃった…よ…?」
「!!!!!」
盗み見たイザナミさんは、もはやこの世のものとは思えない姿だったのです!
身体のそこら中に蛆虫がたかり、うごめく音が聞こえるほど。
さらには、頭・胸・腹・大事なところ・両手・両足に、計8種類もの雷神が湧き出しているじゃありませんか!
身体中から雷神が湧き出す、ってどんな状況?!笑
「…見てない、っと」
恐れおののいたイザナキさんは、見てないフリをしてさっさと逃げようとしますが、イザナミさんに見つかってしまいます。
「見たなーーーーーーー!よくも、よくも!!恥ずかしい姿を見やがってーーーーー!!」
怒りをあらわにこう言うと、黄泉の国の醜い鬼女たち(ヨモツシコメ)に命じて、イザナキさんを追いかけさせました。
必死に逃げるイザナキさんは、ヨモツシコメを追い払おうと頭につけていた黒い髪飾りを投げつけます。
すると、たちまち地面から山葡萄の木が生え、実がなりました。
アンビリーバボー!イザナキさんがいれば、食糧問題は解決。
追いかけてきたヨモツシコメは「うんめえ。うんめえ」と、山葡萄の実を食べ始めました。
その間にイザナキさんは逃げますが、山葡萄を食べ終わったヨモツシコメは、またも追いかけはじめます。
「ヤバい!こうなったら…これでもくらえ!!」
イザナキさん、今度は右の髪を束ねていた櫛を投げつけました。
すると、今度は地面にタケノコが生えてきたのです!
アンビリーバボー!part2 イザナキさんがいれば、焼きタケノコ食べ放題。
ヨモツシコメは、またもやタケノコを抜いて「あむあむ」と食べ始めます。
その間にイザナキさんは逃げます…!!
イザナミさんは、逃げるイザナキさんに次なる刺客を送り込みます。
その刺客とは、身体から湧き出た八柱の雷神と、1,500もの黄泉の国軍!
愛しさは、はかなくも憎さへと変化したわけですね…イザナミさんの本気、やべえっす。そもそも「見るな」って言われたのに、見ちゃったイザナキさんが悪い。
イザナキさんは、腰につけていた十拳(とつか)の剣を後ろ手に振りながら、なおも逃げ続けました。
やっとのことで、黄泉の国とこの世の境界にある黄泉比良坂(よもつひらさか)の入口までたどり着きます。
イザナキさんは、そこに生えていた桃の木になっている桃の実を3つ採ると、黄泉の国軍に投げつけました。
すると、黄泉の国軍は一気に引き返していきました。
桃に呪術的な力が宿る、っていう信仰は中国由来のもののようです。古くから日本でも、桃が祭祀で使われてきたと見られる跡が発見されている模様。
イザナキさんはピンチを救ってくれた桃の実に語りかけます。
「桃の実さんよ、ありがとう。こうやって私を助けてくれたみたいに、葦原中国(あしはらなかつくに:地上の国)に生きる人たちが悩み苦しむ時、どうか救ってやっておくれ」
そう言うと桃の実に、「大いなる霊威を持つ実」を意味するオオカムヅミノミコトという名前を授けたのでした。
これから桃を食べるときは「オオカムヅミ様〜」って言いながら食べてみましょう。もれなく白い目で見られます。
ここで、ラスボス・イザナミさんご本人登場!
怒りと恨みに満ちたイザナミさん本人が追いかけてきたのです!!
あんなに愛し合っていたのに…カップルや夫婦の皆さんは、気をつけましょうね。笑
鬼のように変わり果てた妻を見たイザナキさんは、慌てて超巨大な岩を引っ張ってきて、黄泉比良坂の道を塞ぎました。
この超巨大な岩、原文では「千引の石(ちびきのいわ)」と表現されています。つまり、千人力でようやく引っ張れるくらいの岩ということ。ドラゴンボールかなんかの世界観ですかね?笑
2人は、道を塞ぐ巨大な岩をはさんで向かい合います。
そしてイザナキさんは、変わり果てたイザナミさんに離婚の言葉を言い渡したのです。
ここでは「離婚の言葉」としていますが、原文では「事戸(ことど)」と書かれています。「こと」とは「別」、つまり別離を表しており、「戸」とは「祝詞(のりと)」などと同様、呪詛的な言葉を表すようです。要するに「別れの言葉」となるわけですね。ただ、この場合の別れというのは「離婚」という意味だけでなく、「この世とあの世で決別する」という意味合いもあります。あの世に生きるイザナミさんと決別する、ということでしょう。
別れを伝えられたイザナミさんは、怒りが収まりません。
そして、こんなことを言いました。
「愛しきイザナキさん…!こんなひどい仕打ちをするなら、私は絶対に許しませんからね!あなたが作られた国に生きる人を、1日に1,000人絞め殺してやるっ!!!!!」
…イザナミさーん?それはマズくなーい?笑
イザナキさんは、すかさず言い返します。
「愛しきイザナミよ!お前が1日に1,000人殺すなら、私は1日に1,500人分の産屋(うぶや)を建ててやろう!」
…イザナキさーん?そういうコトじゃなくなーい?笑
こうして、この世では必ず1日に1,000人が死に、1日に1,500人生まれるようになったとさ。
まあ要するに、人が死んだ以上に生まれることで人口が増えていく、という摂理の起源がここにあるという説話ですね。今の日本は、1,000人死んでも800人くらいしか生まれてなさそう…。
そんなわけで、黄泉の国の住人になったイザナミさんのことを、別名・黄泉津大神(ヨモツオオカミ)とも言います。
さらには、追いかけて追いかけてイザナキさんに追いついた!ってことで、道敷大神(チシキノオオカミ)とも呼ばれるそうな。
イザナミさんではあるけれど、黄泉の国に行って姿が変わっていますから、むしろ別の神と捉えることもできるんでしょうね。
また、黄泉比良坂を塞いでいる巨大な石は道反之大神(チガエシノオオカミ)と名付けられ、黄泉の国への道にある扉のようなものであることから、別名・黄泉戸大神(ヨミトノオオカミ)とも呼ばれているのです。
出た!石も神様!笑
ちなみに黄泉比良坂とは、現在の出雲国・イフヤ坂のことなんだとか。
イフヤ坂は、島根県松江市東出雲町の揖屋(いや)付近と言われています。近くには揖屋神社(いやじんじゃ)があり、イザナミさんがご祭神として祀られているのです。
《vol.4へ続く》
次回予告!
黄泉の国から、命からがら逃げ帰ったイザナキさん。
黄泉の国に行った穢れを落とすため、川で禊(みそぎ)をすることにします。
イザナキさんが服を脱ぎ、禊をすると次々に神が現れ、最後に何だかすんごい神様が三柱現れるのでした…!
次回「神々がありあまる〜禊と三貴子誕生編〜」!
明日もお楽しみに!
(参考文献)
・中村啓信訳注『新版 古事記 現代語訳付き』角川文庫, 2009
・『【完全保存版】古事記 日本最古の物語』英和出版社, 2019
※本ブログの記事は、参考文献等の記載事項を基にして筆者独自の考えを交えて展開するものです。歴史的事象には諸説あるものが多いため、あくまでも一つの説として捉えていただきますようお願いいたします。